取材レポート

ぎふの木ガーデンモデルハウス見学

6月上旬というのに熱中症への警戒が呼びかけられたこの日、予報通り、気温は優に30℃を超した。コロナ禍でマスク着用が“新しい生活様式”となったため、いっそう暑苦しい。真夏が思いやられる。こんな日の午後、ぎふの木ガーデン茜部のモデルハウスを見学させてもらった。

ぎふの木ネット協議会が扱うそれぞれ51坪のここの8区画。その多くは売約済みとのこと。見学させてもらったのは、このうちの一つでまだ売約済みになってない建売住宅の一つ。建物のすぐ東には水路があって、その横は田んぼ。この日は田植えが済んで間もない状態であった。水がたたえられたこういった景色を見ると、野鳥やトンボなどがいないかとキョロキョロする習性の筆者、早速水路脇にありがたくないジャンボタニシ(正式名はスクミリンゴガイ)の卵塊を見つけてしまった。主要道路からちょっと離れているだけで、このあたりは実に静かなロケーションだ。

エステックウッドを使ったウッドデッキ

リビング一体型の開放的なウッドデッキ

建物の前に立つと、まず玄関より先に、その右手にあるウッドデッキに目がいった。結構広いスペースで、家族でバーベキューを楽しむのにうってつけなんて、我が家ではないのに勝手に膨らんでいった想像(笑)。それにしてもこの色調のウッドデッキ、どこかで見たことがあるぞ。案内してくれた鷲見さんのヒントで思い出した。そうだ、江間忠ウッドベース(株)だった。1年ほど前に会社を見学させてもらった際、そこでこの特殊な加工材の説明を聞き、個人的には大変興味を感じたものだった。それがこのウッドデッキに使われている加工材だった。確か国産スギを、窒素で満たした圧力釜の中で温度と圧力をかけてじっくりと加工したとのことだったはず。薬剤を一切使ってなくても、枕木や木道として長く使ってもシロアリなどの虫の被害をほとんど受けないという説明を聞いた記憶がある。風雨にさらされても、また土中に埋め込まれてもほとんど劣化しないという優れものだった。しかも落ち着いた色調のウッドデッキだ。

ヘリンボーン柄のオブジェ

広めの玄関に入ると目に飛び込んできたのは、真っ正面にすっくと立つオブジェ。この裏に何かがあるのだろうと触れてみたが、やはり単なるオブジェというか飾りの板であった。木の家であることを実感させてくれた。目を引いたのはこれのユニークなデザイン。山型に木板を組んでできるヘリンボーン柄なのだ。構成されている1枚1枚の色調が異なり、素敵なデザインとなっている。そういえば、以前に筆者は中津川市の内木木工所(株)に何度か訪問させてもらったことがあったが、ここでは一見立体的に見えるこのようなデザインを活かした家具などの商品を製造されていた。久々に見たこの類いのデザインのオブジェは結構印象的だ。

快適な全館空調システム

中に入ると、エアコンが入っており、快適な温度だった。たまたまこの日はお客様との打合せをされている最中とのことだった。2階建てのこの建物はなんと全館空調システムとのこと。驚いたのはエアコンが1台しかないことだ。そこからパイプがつながっており、各部屋にダクトがあって、集塵を兼ねて、設定された温度の清浄な空気が供給されている。我が家のように一部屋用のエアコンで、節電のためにはその部屋に家族が集まるというのではないわけだ。寒い季節、特に筆者のようなシニアになると温度差によるヒートショックで命を落とす危険性があるが、全館空調システムだとそれが防がれるメリットがありそうだ。うらやましい限りである。

そうそう、節電と言えば、時節柄当然とも言えるが、屋根には太陽光発電システムが設置してある。この日もしっかり発電していた。最近の太陽電池は、以前のものと比べると、存在を主張しない目立たないものになったものである。筆者は大学の研究者時代に、未来型太陽電池に携わっていたが、当時の研究室のコンセプトは、環境に溶け込んでしまった目立たない太陽電池の開発であった。この分野も日進月歩だ。

エアコン1台で全館の空調を賄うシステム

ヒノキ大黒柱

リビングには太めのヒノキの柱があった。大黒柱である。大黒柱というと、伝統的な日本家屋で土間と床上との境の中央にある太い柱で、筆者らの小さい頃には多くの家でも見ることができたが、最近はあまり印象がない。このモデルハウスは昔のような本来の大黒柱と言うより、木の家のシンボル的なものと言ってよいだろう。

各部屋の照明も筆者達がなじんできたものとは違って、LEDのスポットライトのようなものがいくつかある方式だ。天井の中央に明るい蛍光灯の照明やシャンデリアがあるというものになじんできた筆者にはいささかの違和感がある。特にリビングのように皆が集う部屋は大きな明るい照明がないと張り合いがないと感ずるのは古い人間なのかもしれない。なお、このモデルハウスの小さなスポットライトの様な灯りでも、部屋の明るさは十分だそうである。LED照明も日進月歩なんだと納得した。

リビング中央の東農ヒノキ大黒柱

用途によって使い分けされた木の塗り壁

さて、この建物の特徴というか最大の売りは木の塗り壁(商品名はMokkun)ではないだろうか。以前の日本家屋には土壁や漆喰が使われていたが、だんだんクロスが主流になってきた。土壁や漆喰は調湿性などに優れているが、クロスや壁紙中心となり、アルミサッシの窓と相俟って、冬には結露しやすくなってしまった。このモデルハウスでは壁の一部、具体的には各部屋の壁の一面だけには木の塗り壁が使われている。

これにより、ヒノキ、スギなどの木の香りを楽しむことができるわけである。我が国では、森林浴としてよく知られるようになったこの木の香り。単にリラックス効果だけではなく、私たちの健康作りにも役立つことが知られるようになってきた。もちろんヒノキなど木の家にはそういった効能があるわけであるが、木粉を使った塗り壁は空気に露出する比表面積が大きいだけにより効果的というわけである。

左から ヒノキ白・ヒノキ着色(グレー)・ヒノキ無垢

梅雨のシーズンは室内もジメジメしがちで、そういうときにも無垢の木板でも湿気を吸ってくれるが、木の塗り壁はその効果がいっそう強くなっている。その速度が速い。このため結露を防いでくれるわけである。逆に冬季の乾燥期には吸った水蒸気を放出してくれる。つまり調湿性能がある。なお、信州大学の中谷先生の実験データによると、このMokkunの吸放出性能は漆喰や珪藻土よりも高いとのことだ。

面白いのはスギ粉を主原料とした壁はリラックス作用が強く、ヒノキでは集中力が高まって、子どもの勉強部屋向き、トイレには消臭効果が高いヒバ粉の塗り壁を、というように部屋の特徴と木材の特性をマッチングさせる工夫もされている。木の塗り壁というとどの壁も木の色一色かと思われがちだが、このモデルハウスでは木の色も薄い目、濃い目、グレーの色調などがあって、部屋の雰囲気に結構マッチングしている。

さらなる木の効果にも注目

こういった木の香りをさらに強めたい場合には、ヒノキ、スギ、ヒバなどから抽出して得られた液体をスプレーすることも可能である。こうして森林の中にいるような感覚を楽しむこともできるわけだ。森林の中に2日間いるだけで免疫力のバロメーターになるナチュラルキラー細胞の活性が56%も向上するという森林総合研究所の実験データを見たことがある。無垢の木と天然素材に囲まれた木の家、コロナ禍で改めて思い知らされた免疫力向上にも役立てれば、これからの住宅にはまさにぴったりかもしれない。

「地球にも人にも優しい」木の家の“ぎふの木ガーデン“を見学させてもらって、改めて木の家の良さを実感することができた。