取材レポート

長良川木材事業協同組合の見学

今日も晴天、取材日和

5月30日、この日もまさに五月晴れだ。その中を郡上市に向けて156号線をひたすら北上する。長良川沿いの美しい景色と折からの新緑を愛でながらのドライブだ。美濃市を抜けると、信号がほとんどなく、予定より早めに郡上市へ入る。

途中、道の駅古今伝授の里やまとへ立ち寄ってランチ休憩。食堂に入ると、さすがここは木材の町。テーブルは立派な分厚い一枚板!と思った途端に、そのテーブル上に見慣れない天然の模様を発見した。同行のアシスタントさんによると、チヂミモクと呼ばれるものだそうだ。トチノキによく見られるとのことできっと高価なんだろうなあと想像した。

地元食材満載の超ヘルシーランチを堪能した後、腹ごなしに古今伝授の里をしばし散策。人影もなく、静寂感が漂う中での贅沢な森林浴だ。瞑想にふけりたい気持ちにさせてくれる研修センター、その中の独特の木の作りは大いに感動させてくれるのに十分なものであった。

ようやく到着

こうして朝から木の雰囲気に浸りながら車を走らせているうちに、郡上市白鳥町の中国木材(株)の事業拠点の一つでもある長良川木材事業協同組合に余裕をもって到着する。広い敷地に高く積み上げられた丸太が目に飛び込んできた。聞くと、ここの敷地は10万坪、“美人の湯”も同じ敷地にあるという魅力的な場所だ。迎えてくれた山内豊史さんから事業概要の詳しい説明を受けた。ここの事業を大雑把に言うと、岐阜県森林組合連合会(県森連)や郡上森林組合などから搬入される主に岐阜県のスギの両端をカットして、皮むきを行った後、製材するとのことである。早速、工場内を案内してもらう。

第一の印象は、林業においても合理化が進んでいるのだということ。丸太を見てコンピューターが実に素早く木材の径級などを判断し、どのように材を取るかを決めて、製材されていた。耳栓無しには作業できない騒音の中、テキパキと木材が処理されてゆく様子は、手作業を連想していたDR.みのりんの木材業界に対するイメージを変えるのには十分であった。

木が暴れるって?

木材業界のことを知らない者にとって改めて考えさせられたのは、木材の乾燥である。伐採された木であってもまるで生き物だ。切ったばかりの水がしたたる木材はこのままでは使えないのは当然である。うまく乾燥させないと木材は“暴れる”のだ。少し前までは天日乾燥でじっくり乾かす工程を経たが、最近は品質の安定と製造工程の時間短縮のために人工乾燥が多いとのこと。話を聞きながら、奈良の法隆寺を作る際にも材の間に何年もかけてじっくり天日乾燥させたのではないかと勝手に思いを巡らせる。ここには50mもある乾燥機が15基もある。ボイラーの熱で乾燥するが、コンピューターで最適条件に設定されている。

樹皮も無駄にせずのポリシーに感動

興味を引かれたのは、ボイラーの熱源はすべてバイオマスを使っていること。樹皮や端材をチップ化したものも燃やすわけだ。工場でたくさん出るおが粉は水分が多くて燃焼効率が低くなるため、使わず、県森連に引き取ってもらっているとのこと。虫好きのDR.みのりんはカブトムシの飼育にと思ったが、オガ粉はまたいろんな用途がありそうだ。なお、燃料として燃やしてできる灰も業者に販売しているとのことで、結局、工場としては木材から出るゴミはゼロ!木質資源を余すことなく使い尽くすと共に、環境にも配慮しているわけだ。“もったいない”と“エコ”、現代的課題に対する解決策をここに見ることができた。

若者よ!林業に関心を!

このように、我が国には知恵はたくさんある。木質資源も豊富にある。でもこれからの担い手がいない!この事業所では、地元から34人を雇用されているとのことではあるが、人手がまだまだ足りないとのこと。若い人たちが林業に関心をもってもらえるようにと、ここへの見学ツアーなどを熱心にされているが、現実には期待通りに人が集まらず、やむを得ずシニアの人で穴を埋めている状況と聞く。山内豊史氏の私たちに対する実に誠実な対応にも、厳しい我が国の林業界への強い思いを感ずることができた。