取材レポート

江間忠ウッドベース(株)見学記

事務所前の味のある看板です

晴れ男伝説継続中

これまで製材現場を中心に見学させてもらってきたが、この日はいよいよ木材のプレカット工場だ。その一つ、羽島市の江間忠ウッドベース(株)の工場を見せてもらう。ありがたいことに、この日も梅雨の合間で、心配された雨も降られずにすんだ。

入り口はどこだ? 初めてのプレカット工場

会社は長良川左岸堤防近くにあった。工場の横に路駐して、大きく開いた入り口とおぼしき所から一歩入るとそこはいきなり工場内だった。セキュリティチェックなど全くなく、ここでいいのかな、不安そうな顔をして進むと事務所を発見。森下茂営業部長が迎えてくれた。

最初に会社概要の説明を受ける。もちろんプレカットに関する説明が中心ではあったが、個人的には天然埋れ木の様に木材を加工して製造されている「エステックウッド」に心引かれた。

事務所内で説明を受けている様子

プラモデルのようなプレカット?

さて、このプレカット工場では、無垢材に加えて最近ニーズが高くなっている集成材のカットを行っている。蒲郡工場が主力であるようだが、そこと比べて規模の小さいここ羽島工場は、全体が見渡せて見学にはむしろ都合がよい。

かつての住宅建設では、建築現場で必要に応じて木材を切ったり、磨いたりして部材を作り、大工さんが建築していったというイメージだったような気がしているが、今は様変わりのようだ。住宅の設計図に基づいてプレカットされた部材を現場に運び、そこではまさにプラモデル感覚で家を組み立てる訳だ。

プレカット工場内でレクチャーを受ける

組み立てるだけになっているこういった部品の大量生産には、特に安心・安全の担保が重要になるはずだ。農業生産物等にはトレーサビリティが義務づけられるようになった。つまり材料の源や加工の履歴などを明確にするわけである。

ここでもトヨタ方式が!!

実際、この工場内には○○様用と書かれたプレカット製品が積み上げられている。しかも、その日に建築現場で必要な分だけ出荷するようで、こんな所にもジャストインタイムのトヨタ方式と軌を一にした考えが入り込んでいるのかと改めてびっくりする。個人の技に頼っていた時代から“個性希薄”の時代へ、これも時代の流れかなんて考えてしまった。そう、合理性の行き着く所なのだ。

木材に刻印された文字の秘密を知る

この工場に積み上げられてある無垢材や集成材には「E110、SD20、ドライ・ビーム」などと印字されてあったが、これがトレーサビリティなのであろうと納得した。E110はヤング率の値、SD20は木材の含水率が20%ということらしい。ヤング率は力が加わったときの木材のひずみで評価される値で機械的な強度の目安になろう。ドライ・ビームは中国木材(株)で製造された乾燥構造材。過日、長良川木材協同組合を見学させてもらった際に見たあの乾燥機で処理を行い、SD20というのは、含水率20%以下のお墨付きをもらったものというわけである。

この工場では、それらに機械部品を製造するときにも使われているコンピューター制御されたNC加工機で、設計通りに高効率で加工されていた。機械工場と何ら違いを感じない生産工程だ。

ここにも職人の技が生きている

ところがもう一つ発見があった。このようなNC加工機による大量生産の中でも、昔の大工の技によりオーダーメイドでカットするために熟練の大工さんも従業員におられ、この日も熱心に黙々と作業をしておられたことだ。古い人間のDR.みのりんはこちらの方に目が釘付けになってしまった。そこには、カンナ、ノミ、直尺、墨差し、墨壺といった、なんか懐かしい感じのする大工道具がたくさんあった。ここは決して博物館ではなく、工場なのだ。大工さんの技が継承されずに廃れてしまうのかとの懸念が払拭されたのはなんとも嬉しいことであった。

木材関係の現場をほとんど知らなかったDR.みのりん。これまでに見てきた丸太の集積、仕分け、製材から今回のプレカットへの流れをこの目で見ることができ。納得することの多い今回の見学であった。