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キミドリ建築

キミドリ建設 恩田社長×ぎふの木ネット協議会会長 吉田会長

キミドリ建築を一言で言うならば

まず、工務店さんの紹介をするにあたって、ワンフレーズで「うちはこういう工務店です」という紹介があれば。

「理想を形に」なんてどうですかね

なるほどね。これはこれでいいんだけど、もっとどーんととんがった、「日本一とんがった工務店」とか、「世界一とんがった工務店」とかね。うちもそういう「日本一面白い材木屋」を目指そうというコンセプトで。本当は「日本一変な材木屋」だったんだけど、ちょっと変人に思われそうで(笑)それで、そうではなくて子供心を持つというか、夢と理想を追うみたいな。社長がやっていることは、言い方はあれですけど子供がそのまま大人になったみたいな。そうだ、「夢追い工務店」なんてどうでしょう。パッと印象に残る感じで。

そういう意味では「宇宙住環境」という感じかな。できれば月・火星とかコロニーとかの方までいけたらなという思いがあるので。

宇宙で住環境、か。それについては面白い話があってね、要するに宇宙船を木で造ろうというのが現実に始まっている。だから、本物の宇宙飛行士が、宇宙で木を育てようというのもある。木材学会の講演で、われわれは「木の力で地方創生」で、「目指すは日本一面白い材木屋」というタイトルで講演したのですが、講演でご一緒した土井(隆雄)さんが、「宇宙で木を使う」と。それで、電磁波に対しても木は十分いけると。

「宇宙で木を使う」なるほどね。そうなるとゴールは宇宙住宅で、それに行くには、まずは確実な気密と、断熱性を最高のものにということ、あとは人間が生活しうる環境をきちんと調べていかないととなる。電磁波については、高周波のところでネットを張ったような感じにすると数値がすごく下がるので、測定していろいろやっている。

サッカーボール住宅・核シェルター・ヘリポート……目指すは宇宙工務店

それと、社長のところの特徴といえば、サッカーボール型の、あれはなんと呼べばいいんだろう。もとから津波シェルターを目的にしていた?

ボールハウスでもいいですし、サッカーボール型ハウスでもいいし、ボール型津波シェルターでもいいです。もともとは20年くらい前の東海大豪雨で、水没した地域のリフォームに行ったときに、こんなことにならないよう水に浮いてしまえばいいのではという思いがあって。その中で、地震に強いだけのはあるけど、地震や台風・水害全てに強いというのはなかったので、だったら自分で造った方がいいかなというところから始まりました。そこで水に浮くにはどうすればいいかと考えて、真四角だと構造的になかなか難しかったので、だったら球体、それも多面体にして構造の分散をしやすくしようとなったのです。その時に一番分かりやすくて計算がしやすかったのがサッカーボール型だった。たまたま(手元に)サッカーボールもあったので(笑)1号機で直径6mのものを造って、それから1.8mの小さいものができて、これが浮力計算上ギリギリの大きさで。その後に3階建てを造って構造計算が確実になりました。最初は基礎なしで造って、それから税金の関係で地面と定着した構造にしたいという要望があったのでアンカー留めにして定着させましたね。もちろん、水道や電気も通っていて、断熱もウレタン断熱でしっかり造りました。現在も、この近くで建てた方が実際に住んでらっしゃいますね。

でも、造ったあとで東北の大震災が起きて、津波も来て。

その時は営業で全国を走り回っていて。ちょうど東北で営業活動をしていて、帰る道中で地震にあいました。津波の報道がある中で、このような営業をしているとかえって心が痛くなってしまい、一時営業活動を中断しました。最近になって落ち着いてきて、当時を振り返る形で問い合わせが来るようになりようやく再開してきたところですね。

これからは、東海地方も危ないといわれています。いつ来るか分からない危機に備えてという感じで、安定して発信できるようになるといいですね。こういうのは、海がない岐阜では売れるかどうかわからないけれど。あと、もっとインパクトがあるものといえば、核シェルターですよね。興味があります。

核シェルターは、広島の原爆に遭われた方が、今度はミサイル攻撃などが怖いということで相談がありまして。その中から生まれたものになりますね。話をする中で、土の層が4m以上あれば放射線が届かなくて、給気口をつけてシェルターの中を与圧すれば、爆風があっても中に被害が及ぶことが少ないことが分かってきました。他にも、空気のろ過や高温の空気についてはろ過フィルターや空気を冷ます装置、爆弾の電磁波についても自転車を改造して手動で電気を回復させる装置を考えて作りましたね。シェルターのサイズは本体が直径3mで長さが6m、第一与圧室・第二与圧室を爆風が直接来ないように本体から曲げて造りました。

核シェルターも、ヨーロッパでは地下鉄がその役割になっていたり、ウクライナ問題が起きてからすごく需要があったりするらしいですね。もともと地下室が各家庭にあって、何かあったらそこに潜るようになっているそうで。危機意識が日本とは全然違うのですよね。そういう知識は、前から興味があって勉強していたのですか?

そうなのです。知識については、前から興味があって勉強していたことが提案に繋がって活かされたかたちですね。海外でも(核シェルターを)作っている会社はあるけれど、これなら自分でできそうだな、となりました。会長  こういうことができる方はなかなかいらっしゃらないですよ。万が一有事の際には、日本中から引き合いがあるかもしれないですね。

そういうことをやっていた頃に、ちょうどJAXAの方がいらして。つくばにあるJAXAの宇宙センターにヘリポートを造る事業に参入させてもらいましたね。でも、見積もりなどを提案した際に、「あれ、キミドリ建築さんって個人事業主なのですか?! 」と驚かれてしまいまして。あれ、知らなかったのですか? って(笑)「JAXAは国の管轄なので、個人事業主とは契約できないのですよ」と言われてしまいました。それで、いったん話は無しになったのですが、ヘリポートの建設予定地が「零磁場」という特殊な環境を人為的に作り出しているところで、普通の鉄筋コンクリートだと造れなかったんです。そうしたらどこも建築方法を提示できなくて、結局うちに戻ってきた感じです(笑)

もう、目指すは宇宙工務店! なんて(笑) 工務店の枠を超えていますよ。こういうのも、独学で学んだのですか? それとも、どこか学校でいろいろ勉強されたのですか?

いや、学校は中学卒業なので。それ以降はすべて独学ですね。それでも、ボールハウスを造ったときも、大学で構造の話をしたりだとか、文部科学省や国土交通省からも法律の話などで呼ばれていろいろ話をしたりしましたね。そのときに向こうから、「君はどこの大学を出ているのかね? 」と言われて出身の中学校の名前を答えたら、「知らないなぁ……」と返されたこともありますね(笑)

中学校を卒業してすぐこの業界入ったとなると、キャリアは長いですよね。

そうですね、15歳からやっているので……何年になるんでしょう(笑) 愛知県の犬山で5年くらい修行して、親方は厳しい方でしたね。でもおかげさまでいろいろなことを覚えてできるようになりました。

さっきから話を聞いていると、すごく魅力的で、人間的にも深みがある方だなと感じます。まとめる際にも、夢を追っている感じで、一つの読み物として面白いように上手く引き出して伝えられるといいのですが。最近、WEBの力を再認識させられた出来事があって、やはり地域の工務店さんのことも(WEBに)掲載して、埋もれがちな魅力をうまい具合に拡散できたらと思っていますね。最近、我々が目指す工務店像はなんだろうと考えたときにぱっと思いついたのが、「百花繚乱」という言葉で。それぞれこだわりも特色も違うけれども、みなさん競い合って高めあう、そういう世界がいいなと思いますね。キミドリ建築さんはいいホームページを持っていますから、それに加えて会社案内やブランドブックみたいなものがあるとより周りへ思いが伝わるようになると思います。

百花繚乱、いいですね。今の話で、宇宙住宅の話も以前は思っていても周りへ言えずにいました。それこそ、話したら変わり者だと思われるだけで終わってしまう不安があったので。ある程度実績を積んで、JAXAからの仕事もして、やっと言えるようになってきました。

そういう話もブランドブックに載せて、価格などをのせるのではなくて、社長の想いであったり目指す世界観であったりを入れたようなものがあるといいと思いますね。

そういえば、ハーフセルフビルドというお客様の方でできることはお客様にやってもらうというサービスもしていますね。例えば、基礎の鉄筋や木の加工、型枠組むところとかをこちらの工場でやってもらったり、床張りとか壁張り・壁塗りはお客様にも手伝ってもらったりして家を造るという感じですね。ハーフセルフビルドでやってもらうと、お客様の方にも自分の家を造っているという実感がすごくわくので、言い方はあれですけど、クレームにもなりにくいのですよね。加えて、メンテナンスも自分でできるようになるメリットもあります。海外では自分たちで家を造るのはよくあることですし、最近は時間があるけども……というお客様も増えてらっしゃるので、半分セルフを選ばれるお客様も多くなってきています。この間のお客様も、全部最初からで、重機に乗って、重機の資格もとってもらったりして(笑)横から色々教えながら何年もかけて家を建てましたね。工場に来て一緒に色々機械を使って家具を造ったりもしました。他にも少し前にロボットも導入しまして、簡単なプログラミングで動いて小物とか電球をとる様な単純作業ができますし、危険なところでも道具を持たせて動かせますから、怪我の防止にも役立っていますね。

よく左官とか壁塗りのような一部分を体験してもらうのは聞きますけど、基礎からというのはあまり聞いたことがありませんね。そういうのを全部記録していったらとても面白くなりそうですね。

ぎふの木ネットに期待すること

住宅も近頃は大手といいますか、パワービルダーの躍進も大きいですね。業界1位のところは日本の新築住宅の5%ものシェアがありますし、それに続く大手もどんどん地方に進出してきていますね。そのような会社だと、海外の工場や研究施設も持っていて価格に対して高性能であるのをうたっているところも多いですね。そのような中で、地元の工務店がどうやって存在価値を高めていくかが重要になります。私は住宅がすべて大手によって建てられ、画一的になっていくのは面白くないと思います。個性を大切にしつつ共同で資材をパッケージ化したり、申請業務をフォローしたりと一社単独では出来ないことや困りごとを聞いて出来るようにすること、これをぎふの木ネットの役割にしたいですね。ぎふの木ネットでこれからしてもらいたいこととか国産材の利用を進めるためのアイデアやリクエストはありますか。

私たち工務店ですと申請業務が苦手なところも多いですからね。あと、人材派遣みたいなことも最近やってみえますよね。よく頼もうと思っていても順番待ちなときもありますし、リフォームをやっているとこの日だけ人が欲しいなんてことがよくあって、ちょこちょこ来てくれる人材がいるといいなと思います。それと、お施主様に補助金であったり色々なサービスであったりの説明が難しくて。パッとみせてすぐ分かってもらえるような資料とか仕組みとかを作ってほしいなと思います。

いいですね。今やろうとしているのが、使っている工務店さんがその運動に加盟していることが伝わるような資料というもので、それを一社一社作っているというので、これもその一環ですね。また、人材派遣の仕組みは今作ろうとしていて、一社単独では難しいので他の会社のサービスとも連携して、ITを活用しながら構築できないか考えています。キミドリ建築さんにはぎふの木ネットの理事をやってもらいたいですね(笑) ロボットなどを活用してもっと仕事増やして規模も大きくして。経営のノウハウはこちらががある程度表に出ない形でぜひお手伝いしますよ。ぎふの木ネットを活用して加盟している不動産会社と組んでアピールしてもいいと思いますし。社長のところの住宅の価格とか性能とかを一般の方にも伝わりやすいようにして、ターゲットを絞った戦略で集客する。それが重要だと思います。

県産材サプライチェーンについて

ぎふの木ネットを運営していて、外材はもうあまりよくないと思いますね。安定供給も難しくなっているし、この度のウッドショックやウクライナ問題みたいなことがまた起こらないとも限らない。外材は資源量も年々減っています。対して国産材は年々資源量が増えています。岐阜の山も資源量が増えていっていますし、国産材の供給をもっと効率的にすればコストも下げられる可能性もあります。また、ウッドマイレージなんて言葉も出てきまして、外材を遠くから輸入するとそれだけCO2がかかる。それだったら地元の山から切り出した木を使った方がずっと環境にいい、そういう潮流になってきていますね。そのためにも、山や製材工場と繋がって、国産材を安定的な品質で、安定的な価格で供給する。われわれのような商社と山と工務店との三者間連携、これにキミドリ建築さんものってほしいと思うのです。そこからお施主さんも木がどのように製材されているか、どこの山の木を使っているかが分かるそういう方向に舵を切っていきたいです。それで、社長からも県産材の活用に賛成ですとか独自にこんなことを考えていますとか、なにか思いがあればお聞かせ願いたいです。

県産材を使うのはとてもいいことだと考えていますね。そうだ、これも気になっているのですが、大手ビルダーさんが積層材を多く使っていて、われわれは無垢材をよく使っているなかで、お客様がよく大手の営業さんから「天然材は反ったり割れたりが多いからよくない」と言われたと話されるのですよね。それに対してこちらとしては、「そんなことはなくて、きちんと乾燥や処理をした良質な材を使っているから心配いらない」と訂正しなおすような状況で。木材の乾燥や処理がどのように行われているかや無垢材がどのように優れているかが伝えるものが欲しいですね。

県産材というと今は針葉樹が多く挙げられるけど、広葉樹もあって、家具を造るのに使っていこうというのも進んでいます。積層材にも安定した品質など良さはありますし否定はしませんが、歴史が浅いですからね。例えば100年後どんな状態になっているかがまだ分からない。それに接着剤の問題もある。無垢材はそれこそ法隆寺にしても何百年、千何年ともっている実績がある。反りや割れも完全とは言わないが乾燥技術が進んできている。フローリングやテーブルの場合だと、無垢材ならば削ったり手入れしたりで何度でも使える。無垢材のいいところはぎふの木ネットでもアピールしていく必要がありますね。

ぜひしてくださるとうれしいです。

工務店さん側が使いたい材料は会社によってバラバラなのですが、そうなると、もし県産材でこういう材が欲しいといわれても製材所の準備が整っていなくてすぐに手に入らないという状況が起きるなどいろいろな問題が発生してしまうのですよね。それをクリアするためになるべくサイズを統一しておけば製材所も準備ができる。さらに、今年は何棟くらい県産材で建てるかが見えれば用意する量が分かるし価格も一定期間で決めれば安定供給ができる。そういう仕組みの構築を今しようとしているのですよね。こういう資材パッケージについてのご意見はありますか?

これと完全に決めてしまうと難しいかもしれませんが、製材だけでも規格を決めて挽いて、そこから調整する方法なら使いやすいと思います。そうすればそれぞれの建物が建てられますし。(丸太を見せて)こういうものを見せる建物が良いというお客様もみえますし。

なるほど。やはりウッドショックのときも影響は大きかったですか?

数年前のウッドショックのなりかけぐらいから「これはやばいかもな」と思い、材料をストックしていたから今の所は大丈夫だけど、この先も続くと問題だと思います。

そうだったのですか、確かに倉庫自体とても大きいですからね。うちの会社より立派なのではないかと(笑)使ってみえる材料だと県産材はどれくらいですかね。

県産材はいいと思いますよ。良質ですしね。でも、県産材をプレカットの際に、何も言わなくても県産材のルートの方で選んでくださるような仕組みがあると嬉しいですね。そのまま外国産材になってしまったりもありますし。

ぎふの木ネット仕様で、県産材の割合が60%程度になるように仕組まれてはいますね。これが構造材パッケージになりますから、これを使えば自動的に県産材に流れていくようになりますね。あとは、パッケージの中の資材を安定して供給することにも取り組んでいます。今までやれていないことをやろうとしているのでなかなか大変ですが、構築していこうと思います。

性能と自然素材の両立、そして次世代へ

最後に、キミドリ建築さんは、どのような家造りを目指しているのですか?

耐震と気密は結構気にしていますね。でもその中で自然素材も使うといった感じですね。

となると、性能と自然素材の両立はポイントになりそうですね。あとはデザイン性をどうするか。デザインは誰が担当しているのですか?

デザインは私が(笑) よく斬新なものを期待されます。

斬新なのもいいけど、やはり、おしゃれ感のあるものですよね。工務店としてどんな方向を目指していくかというのは大事ですけど、また代替わりするとそういうのも変わりますからね。次世代の人をどう育てていくかは課題ですよね。

そうなると、次世代の方たちだけの集まりとかも作ってもらえるといいと思いますね。私たちの世代が入るとどうしても萎縮させてしまいますからね。

なるほど、それは面白い、これからの若手の新しい感性を育てていくことも、ぎふの木ネットで出来るようにしていきたいですね。