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1300年前から木をうまく利用してきた証といえる「本美濃紙」

ぎふの木コラムということで、主に岐阜県にまつわる木や話について書いてきました。
今回も岐阜を代表する木に関わる話なのですが、木から少し形をかえて出来ているモノ。

岐阜が誇る無形世界遺産「本美濃紙」についてお伝えしていきたいと思います。

本美濃紙とは

名前にも入っている通り、岐阜県美濃市で作られている和紙のことで、実に1300年の歴史があります。
板取川・長良川の豊かな水で作られる和紙は機械漉きでも手漉きでも総じて「美濃和紙」と呼ばれています。
その中でも無形世界遺産に認定されているのは「本美濃紙」と呼ばれ、その条件にあった材料、工法で作られた紙だけがその認定を受けています。

条件一、原料はこうぞのみであること。
二、伝統的な製法と製紙用具によること。
  白皮作業を行い、煮熟には草木灰またはソーダ灰を使用すること。
  薬品漂白は行わず、 料を紙料に添加しないこと。
  叩解は、手打ちまたはこれに準じた方法で行うこと。
  抄造は、「ねり」にとろろあおいを用い、「かぎつけ」または「そぎつけ」の竹簀による流漉きであること。
  板干しによる乾燥であること。
三、伝統的な本美濃紙の色沢、地合等の特質を保持すること。

美濃和紙と本美濃紙の見分け方

上記でもお伝えした通り、機械で漉かれていても手で漉かれていても全て美濃和紙と言えるのですが、ここで一つ、手で漉いた美濃和紙と本美濃紙の見分け方を簡単にご紹介しましょう。

紙を光に透かして見るとうっすら線がついているのがわかるでしょうか。
これは手漉きで漉く時の道具「 簀 (す)」の跡です。
簀(す)は細くした竹を一本一本編んで作られます。
その編まれている糸の線が出来上がった紙についているのです。

美濃和紙(途中2本入るところがある)
本美濃紙(一定の間隔で入る)

見分け方は簡単。
どちらも線は一定間隔で入っているのですが、
美濃和紙は途中、途中で二本入っているところがあります。
本美濃紙は全て均一に線が入っています。

これは決められている”「かぎつけ」または「そぎつけ」の竹簀による ”という道具の規定があるため、このように紙にも目で見て分かる違いが出てきているのです。

原材料はコウゾとトロロアオイ。

さて、ではこの本美濃紙。
最初にも書かせて頂きましたが、どのように木と繋がりがあるかというともうお分かりかもしれませんね。
そう原材料です。

原料のコウゾ

和紙自体は昔から原材料としてコウゾ・ミツマタ・ガンピという三種類の樹木のいずれかが使われることが一般的で、本美濃紙はそのうちのコウゾを使ってつくられています。

紙に使われるのはコウゾの形成層だけ。
その部分をとるために煮て柔らかくし、必要な部分だけを取り除いて、川にさらし、さらに手で細かく不純物を取り除きます。
コウゾをたたき繊維を壊して、そこにたたいたトロロアオイという植物を水と合わせて混ぜ込みます。
あとは道具で漉いて乾かせば完成です。

「紙」と聞くとイコールで「木」と結びついてくることはなかなか無いと思いますが、紙は木から出来ています。
昔はその紙を造る道具も木を使い、木の性質をよく理解しながら様々な所に役立ててきました。

1300年前から変らない工法で作られる「本美濃紙」はまさにその象徴、証であるといっても過言ではありません。


現在ではいろいろな素材や材料があるため、私達はそれらの特性をしっかりと理解し、かつ地球に負担の少ないエコな材料をうまく活用していくことが求められています。